Worldias Chronicle(邦題:ツンデレ戦記)

株式会社トミーウォーカーのPBW『シルバーレイン』のキャラブログ。

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The Knight's Sunrise Ⅲ

彼が5年生に進級する春休み、学校からウィルウォード宛に手紙が届いた。内容は、この5年生から始まる、四半年ごとに交代で行われる、ある行事、「お泊り遠足」に関する保護者の承諾、許可書だった。
もちろん、これに拒否の判を押す親はいない。何故なら、この行事…「お泊り遠足」こそが、この学校に入学させる所以だと言っても過言では無いからだ。


メイドさんが持ってきてくれた手紙を読んだウォルディは、メイドさんと、一応の「保護者」である姉さんに見せた。
「うーちゃんは、5年生は後組なんだね。4・5・6月は学校で授業、7・8・9月と1・2・3月に行くんだ。夏休みと冬休み、潰れちゃったね♪
「6年になった時、先組になるから気楽でいいよ。姉ちゃんの小言を聞かなくてすむならすぐにでもいきtぶぶぺらっ!」

実際はもっと複雑で、6年の先組は、オフになるハズの1・2・3月を、学校での最終授業期間として、厳しく高度なことを教わる。それは、より厳しい(仕官学校付属)中学校でのより厳しい訓練や教養に応えるための「受験勉強」である。つまり、6年の先組でもあるこの5年の後組は、エリートの中でもエリートになるために選ばれた、才能ある子供達の集団なのであるが、ウォルディは知る由もなく、姉は姉で当然のように「5年の後組」だったので、対して感慨も無く、弟を殴りつけた。


戦争はいつの時代もどこかであるもので、彼等が送られたのは、当時未だ戦火が消えず、銃声が鳴り止まない中東の「とある」地域である。経済、軍事的にほぼ世界を「支配」している大帝国が、自らの正義を行使し、地図から取り残された小国が、虚構に縋って死すらも美化する。ありきたりな構図であるが、戦史を読むのと、現実は違う。不謹慎な言い方だと、「よりリアルで面白い。」のである。

少年兵、と言っても嘘では無い彼等は、メディアに晒される事を極力避けられる。また、いくら兵卒とはいえ、非力で経験も無い彼等が前線に送られる事は無い。最初に彼等は、戦争の現実を端的に、もっとも明確に表れる場所に送られる。10歳ごろになると、小さな頭で無限の発想を行うようになる。善悪や判断も身につく。拙いながらも思想を構築し、英雄や自らの正義を考えたりもする。そんな彼等の芽を摘む。…と言うより、そんな彼等に無理やり新たな根を植え付け、思考回路を縛り上げる。…ためであろうか。

それは、戦死した兵士や一般市民などの「処理」を行う場所である。
目を瞑りたくなる傷跡、鼻をつまみたくなる腐臭、耳を覆いたくなる呻き、舌を隠したくなる空気、肌を抱きたくなる絶望…そんなものを、最初に見せる。やはり…いや、最初から分かっていた。善悪の彼岸に立つ前より常識として教わり、習い、学んでいた。それでもやはり、再認識せざるを得ない。ここは、世界は、やはり狂っていた。

そうやって、彼は徐々に慣れていった。戦場、悲鳴、殺人、銃声と言った直接的なものから、組織、役割、戦術、兵隊と言った、概念としてしか見えない曖昧なものまでを理解していった。最初こそ戸惑ったが、今更彼に歩みを止める選択肢など存在しない。

ウィルウォードとして、騎士として、家と、国と、大事な人を守りたい。幼い頃に失った、ある意味不可避であった両親の死すら、自らを責める要素になっていた。自分がもっと早く生まれていれば、自分がもっと強ければ、自分にもっと知恵と力があれば………その強靭な意志は、ある面では軍隊にとって非常に有用だった。新たな思想を植えつける必要なく、彼の責任感や義務感を刺激するだけで、非常に士気が高く、明瞭な目的を持った将兵が誕生するのだから。

そして2年間、「お泊り遠足」先では主にそういった裏方の作業を行い、「戦争」を学んだ。学校に戻れば、5年後組として、更に踏み込んだ知識を詰め込まれ、確実に、エリート街道の開発に力を注いでいた。

そして、最後の「遠足」が終わってまもない、12歳の1月を迎える。
彼の12歳の誕生日、11月20日の事である。
彼は、その才能と努力で得た実績で、リトルフォースの小隊長にまでなっていた。(ちなみに、小隊は30-60名で編成される。本来なら左官クラスが指揮するが、訓練も兼ねて、リトルフォース内より選ばれる。)全5年生と6年生のうち半分が来ているので、数はほぼ100人いるかどうか。である。よって、リトルフォースは小隊が二つで編成されているので、第三小隊のウォルディと第四小隊のもう一人、雪合戦で防衛隊のリーダーを務めた、「デュラン」が部隊長だった。

あまり人と接さないウォルディだったが、このデュランとは割と打ち解けていた。性格はあまり似なかったが、考えや嗜好が似ていた。聞けば、彼も「騎士の子」らしい。成績や知識、能力はウォルディの方が明らかに高かったが、お互いに良いライバルであった。

その日は第三小隊が、付近の村落の衛生、治安維持活動、第四小隊が、兵站補給の護衛、という、いつもと変わらない任務に就いていた。ただし、戦略的価値が無い場所に敵が現れないとも限らない。特に、マトモに軍学を学んでいない民間の義勇軍、テロ、ゲリラ組織、などは、戦略も無く一人の敵を殺す事に、容赦は無い。珍しくないとは言え、彼等も、そんな不幸に出会ってしまった。

「あーあー。後一ヶ月か。好きじゃねぇが、これで食ってくんだもんな。もっと慣れておきたいぜ。」
そううそぶくデュラン隊長、補給車の護衛。とは名ばかりのようで、補給車に続く軍用トラックに乗って、ドライブ気分だ。もちろん運転手は正規の大人だが。
「デュラン君。そんな事言って、最初はビビってたんじゃん(笑)ウォルディ君にどれだけ笑われてたか。みんな知ってるよ。」
「う、うるせぇ!…とはいえ、アイツは早く慣れやがったな。すげぇぜ。今も町の人たちと遊んでるんかなぁ………うわっ!!」

- 気がつけば前の車両が止まっていた。煙と硝煙の匂いがしたかと思って外に出ると、小さいながらも確かな「戦場」だった。

敵の数が多い…。こちらは劣勢と判断したのか、前を護衛していた正規兵が囮になり、その隙に補給車とリトルフォーストラックを逃がす作戦に出た。しかし、その先、遠くない所には、ウォルディ率いる第三小隊が活動している村落である。住民に不安感と猜疑心を植え付けないよう、最低限の装備しか持っていかない。デュランは、この最前列の正規兵がゲリラを追い払ってくれる事を願いつつ、ウォルディに連絡をし、詳細を伝えた。

「………All Right.準備を整える。合流次第すぐ戦闘に移れるよう、第四小隊の用意もやっておけ。Over.……」

ウォルディは地元の子供と遊んでいた。戦争と貧困によって何も無い。暗い世界に残された同じ年の子供達。せめてこの戦いの後で長い平和を獲得し、希望ある未来に進んで欲しいという、人並みの憐れみを持っていた。
住民の治安維持と衛生管理を行いつつ、交流を図っていた第三小隊だが、自体は一変。流石に統率された動きで準備を行うが、時間も装備も何も足りない。
 -住民に知らせて助力を願う? -混乱を招いて、反感を買うだけだ。そもそも発端は俺達だ。
 -安全地帯まで逃げる? -第四小隊はともかく、俺達は徒歩だ。逃げ切れない。
 -村に匿ってもらう? -村狩りが行われるだけか…もともとゲリラにとって、ここは裏切り者だ。

結局、自分たちの力でどうにかするしか無いと思い、小隊全員を集合させた後、村人に説得した。村に敵が迫っている事、自分たちが確実で撃退するから、家に閉じこもり、出ないで欲しい事。そして、自分たちの責任で危機に遭わせた事…村人は、一様に肯定の姿勢を見せている訳では無かった。が、概ねの了解は得た。

第四小隊と合流後、トラックの数が足らない問題で、ここで足止めをする事になった。補給車と少数の正規兵と共に村の前面に展開、ゲリラと戦闘を行いながら村と補給車を守り、本隊からの援軍が来るまで持ちこたえるのが、本作戦の概要である。既に連絡は入れてあり、30分ほどで第一波の援軍が来るらしい…が、囮の正規兵はどうなったであろうか。5分後、敵襲到来の報を受け、ついにゲリラとの戦闘が始まった。

装備の軽い第三小隊は補給車の後方にて待機、第四小隊は正規兵の後ろで援護射撃を行っていた。不規則な所から表れるゲリラ兵に苦戦しつつも、流石に装備と訓練が行き届いた正規兵の巧みな戦いで、何とか持ちこたえている。

しばらくして、ゲリラの攻勢が止んだ。不思議に思い、部隊が分断されない程度に先を進んでいく正規兵。第四小隊は援護出来るギリギリの射程まで離れながらも着いて行く。第三小隊は動かない。ウォルディは……最悪の展開を想像し、的中した。

「Back Attack! チィ…第三小隊は後方に展開、第四小隊!!!戻って来い!」

ゲリラは、村人に扮装した。恐らくは脅されたのであろう、村人と一緒にこちらへ走ってくる。銃を放ってくるゲリラもいたが、こちらは村人に当たるため、撃てない!正規兵は前に残るゲリラに睨まれているため、踵を返すことが出来ない状況だ。
第四小隊が合流するが、無理も無い。同じく躊躇する!第三小隊が次々に消耗…クラスメイトが眼前でで撃たれ、殺され、吹き飛ばされている中で、ウォルディはある決断をした。

「守れるだけは守ろう。そのために最大の努力はしよう。だが、全ては守れん。ならば、俺が守ると決めた方は完全に守ってやる。」

ウォルディは、第三、第四小隊の全隊員に、射撃命令を下した。もはや村人の救出は無理である。ならばせめて、部隊を、クラスメイトを守る。
-チッ…まただ。また守れなかった。…もう…これで最後にしたい…クラスメイトは守りたいっ!

デュランと共にウォルディは突撃!デュランは頑強で、しかも「戦闘」を知っていた。ウォルディが手榴弾と弾幕で援護し、デュランが突撃銃とナイフで倒す。-近接戦闘なら、誰が敵で誰が敵でないか、目を見りゃ分かる…。
漫画のようだが、訓練されている者とされていない者の差は歴然だった。ゲリラは容赦なく打ち抜き、村人は出来るだけ急所を外す。彼等に出来る唯一の「救い方」であった。

もはや地獄だった。何処かが壊れた、何処かが無くなった人間までもが銃を捨てられない。倒れている肉が死体かどうかもわからない。敵と敵でない区別がつかない。そんな中、連絡が入った。

「コチラ、ロイヤルエアー047…目標到達地点付近ニ到達…ガスニヨル制圧ヲ試ミル…20、19、…隊員ハ速ヤカニマスクヲ装着、或イハ車両内ニ退避セヨ…13、12、…」

ふと、上を見上げると、英国空軍…が、「何か」を落としている。一瞬の思考の後、何が起こるか分かったと同時に、衝撃によって吹き飛ばされた。
「テメェ、走れこの野郎!こんなド真ん中でボーっとしてんな!」
どうやらデュランに突き飛ばされたらしい。手を借りて立ち上がると、補給車付近の、部隊陣地付近の小さな塹壕に走りこんだ。
「ほらっ、マスクだ。お前どうせ持ってきてないだろ。」
「ふん…俺の今日の任務は戦闘じゃないんでな。」
マスクを受け取ろうとした。しかし、マスクを持っていたデュランの手が、真っ赤な事に気づいた。
「なっ…貴様!…まさか、俺が油断した時に…?」
「違ぇよ!敵を殺しまくった返り血d…ゲホッグハァッ…」
大量に血が出る。どうやら、すぐにでも治療を受けないと危険な状態だと言う事は、授業で習っていた。さらによく見ると、デュランの分のマスクが無い。
「これは貴様のだ。さっさと治療を受けろ…俺が行く。後十秒持ちこtr(ゴッ!!)」
デュランはウォルディの水月に、容赦無い1インチパンチを叩き込んだ。そして静かになったウォルディにマスクをかけ、ウォルディの小銃と自らの突撃銃を抱え、塹壕を出た。

「ハァハァ…聞けェ!…俺が『ディエゴ・ダッグスラン・デルキモート・ドレイク・デルランド』…グハ…ッペ…『デュラン・デュランダル』だ!我が英国のため、我がデュランダル家のため、我が同胞のため、俺の身のみでは不足だろうが、残りの精算は地獄で頼むぜぇ!」

…………撃った。撃たれた。斬った。斬られた。…壮絶な死闘、精神が完全に肉体を上回っていた。そして彼の意識は、上空より落とされたモノが地上に解き放たれ、地獄を齎す前に途切れた。




6年先組が、帰ってきた。全員ではない、それに、何かを失って帰ってきた者も少なくない。

このクラスで、一番の昇進をしたのは、一番の名誉を獲得したのは……ウィルウォードの騎士では…無かった。
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この記事へのコメント

凝り性ですね…

引いちゃうぐらい長いな。しかも自己満足なのです。

とりあえず、これにて幼年期編は終わりです。次は少年期編なのだ!

  • 01/10/2006
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